良い学校、良い教育とは何か。(2011年11月)

今年度も数多くの私立中学、高校の説明会に出席しました。
どの学校も有名大学合格実績や、そのためのコース・カリキュラムの充実、学力アップのためのチューター制度、学習施設や新校舎の充実を強調されています。
お話を聞くとどの学校もそれぞれ努力されていて、なるほどと感心します。
保護者の方の関心は、概ね見てはっきりわかる大学合格実績と偏差値であろうと思われますから、学校の方もそれを強調するのは当たり前です。
しかし良い学校、良い教育がそれによってわかるかというとそうは言えないのはお分かりになるでしょう。

毎年説明会を楽しみにしている学校に富士見丘中学高校があります。
去年は英語の本の読解の教育にパソコンを導入している例を説明されていました。
各自で各々の英語の本を読み、読み終わったらその内容に関するパソコンでの設問に答えて、ちゃんと内容を把握しているか捉えてから次に進むという方法で利用しているのです。
大変効果的なパソコン利用法だと感心しました。

富士見丘中学高校では土曜日を使って5×2という自調自学の学習を行っています。
一年をかけて好きなテーマを学習し、それをまとめるという学習です。
自由研究や卒業論文を取り入れている学校は所々で耳にします。
しかしその成果がどの様に現れ、これからの進路にどのような変化をもたらし、生徒はどう変わったかということがわからない学校がほとんどです。
この学校では5×2storyという小冊子にその成果がまとめられて大変興味深いのものに仕上がっています。


研究内容も多種多様です。その内容を見てみましょう。
江戸文化、食品添加物、鳥の生態、カイコの飼育、高尾山の自然、世界の遊びとおもちゃ、お茶、視覚障害、20世紀を変えた女性たち、幽霊にまつわる江戸訪問、草木染め、郷土料理、ケナフの生育、洗濯の科学、国際連合と国際問題、東京大空襲、日本の法律は正しいか、ハーブと体質改善、ドレスメイキング、脚本家になるために、など。
読んでみると大変内容の濃い調べ学習、観察・実験・体験学習であることがわかります。
この小冊子はダイジェスト版なので見開き2ページに1テーマ書かれているだけですが、実際の研究成果を見てみたいという衝動に駆られます。
それぞれの生徒がそのテーマにどんどんハマっていく様子が手に取るようにわかります。

この様な積極的な学習態度に向かうには、まず、対応する教師の的確なアドバイスが必要だったことでしょう。
モチベーションの維持にしてもそう言えます。
そして次に家族の協力です。野外の観察や実験、インタビューに保護者の方が一々付き合っていらっしゃる。
保護者の方の協力なしにはできないものです。
カイコを実際に飼ったり、ケナフを育てて紙を作ったり、塩や色々な納豆を実際に作ったり、色々な植物で草木染めをしたりとかなり大変だったでしょう。
こういった自調自学学習の中で、調べる方法、計画の立て方、インタビューの仕方、文章を作る方法、まとめ方など様々な方法が身についたと思われます。
これらの力はこれからの人生にものすごい力を発揮するでしょう。
また、研究に対する達成感、充実感を味わい、調べる楽しみ、勉強の面白さがわかったことと思います。

自由研究で培った積極性や興味から将来の方向、進路が自ずと定まった経験談も載っています。
私はこれこそ勉強の王道、素晴らしい教育だと思うのです。
全部の生徒がこのような素晴らしい成果を出せるとは限らないでしょうが、こういう機会を持てることが大事であると思います。
担当した先生方の苦労談をお聞きしたいものです。
そしてその後の生徒たちがどのような進路を取り、現在どのような活躍をしているのか。
大変気になるところです。
皆さんも是非富士見丘中学高校の説明会で5×2の成果をご覧になってはいかがでしょうか。

Miyachi-Zemi

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