家庭学習 (2009年3月)

文化庁長官であった心理学者カウンセラーの河合隼雄さんが、一昨年亡くなられたことは本当に残念でなりません。
河合さんは、日本から真に新しいことを世界に向けて発信することのできた偉大な人でした。
2008年3月に出版された『河合隼雄のこころ ― 教えることは寄り添うこと』(小学館)を読み、改めてまた感銘を受けました。
13章家庭学習の項には次のように書かれています。

「家庭学習は非常に大切なことである。これは単に学習をするということのみならず家庭内におけるしつけにも関連してくるので、その大切さはきわめて大である。…このためには、小学校一年生のときから、家庭学習をきちんとするという習慣を身につけさせることが大切である。子どもにこのような習慣をつけさせる根本は、親の生きている姿勢である。親が節目も何もない生活をしていて、子どもにしつけをしようとしても無理である。…夫婦が共に働いているので、家の中でそんなにがっちりとした生活はできない、という人があるかもしれない。これに関しては、子どもというのは「本質」を直感的につかむ力があるので、大丈夫といいたい。時間にルーズにしていたり、家庭では少しぐらいのんびりやっていても、親の生活に「筋が通っている」かどうかは、子どもに案外伝わるものなのだ。…親は、親なりに筋を通して生きている。子どもの筋を通した生き方には、家庭学習が不可欠だ、というような、しっかりした姿勢がなくてはならない。…困るのは、塾や家庭教師に、子どもの教育を「まる投げ」してしまって、「親は我関せず」というような姿勢になることである。お金を出すことで万事解決、と思ってしまうのだ。子どもが一番いやがるのは、親がお金だけ使って、心を遣わないことだということを、よく知っていなくてはならない。」
(『河合隼雄のこころ ― 教えることは寄り添うこと』(小学館))

私は小学校一年生くらいでは基本的には塾は必要ないと思っています。
それよりもしつけをかねて、鉛筆の持ち方、文字の練習、音読、四則計算などをお母さんに見てもらいたいのです。
最近は仮名や漢字の書き方がひどい子が目立ちます。
例えば西という字をπから書いていく子が結構いて、それを見る度に気持ち悪くなります。
きっと文字を練習する時に、お母さんやお父さんが一緒に見てくれなかったのだなあ、かわいそうになあと感じてしまいます。
まともに文字が書けないのは恥です。
こういうことは毎日繰り返し繰り返し注意しないと直りません。
責任を持ってそれができるのはお母さんしかいないのです。
またそれによって親子の絆も深まります。

毎日30分でも一緒に家で勉強するという習慣を小学校一年生からぜひ始めてください。
家で何も勉強しないという習慣がつかないように。
また、塾は家庭学習の代わりにはなりません。
毎日塾漬けとはもってのほかです。
最終的には、自分で時間の使い方を工夫し、人に教えてもらうのではなく、自ら問題に挑戦していけるようにするのが勉強の本来の目的だからです。
いつまでも人に頼っていては自主性が育ちません。
中学生以降になって、どうやって勉強したら良いか、何を勉強したらよいかを悩み、工夫していくのがおもしろいところであり、個性が育つところでもあるのです。
河合さんがお亡くなりになったことをとても残念に思います。

Miyachi-Zemi

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