5×2自由研究の試み(2007年7月)

今年もたくさんの私立中学、高校の学習塾に対する説明会が行われています。
説明会では主にその学校の教育方針、校長先生をはじめとする教職員の方の意気込み、学力向上のための取り組みに関心をもって聞いています。
もちろん前年度の入学試験の結果データと来年度の入試の予定、進学実績などを確認することは言うまでもありません。 私立学校のほとんどは学力向上、進学実績の向上を目指して、大変な努力をしていることがわかります。

まじめに真正面から取り組んでいる富士見丘中学高校の5×2と題する自由研究が目を引きました。
冊子「富士見丘学園・授業5日制の手引きVol.11」には様々な生徒の研究の成果と感想が書かれています。
カイコを実際の育てて観察した中1の生徒、苦心してお米を実際にバケツで作って食べてみた中1の生徒、時効や死刑制度から日本の法律は正しいかと問うて行動を広げていった高1の生徒など、とても興味深い体験、研究をした例が書かれています。

中でも目を引いたのは、ある高2の生徒の研究です。
「コスモポリタンとしての教養」と題する研究で、同じイスラム教徒同士でなぜ争うかという問いから始まり、考えを深めていく様子が書かれています。
実際にイスラム教徒の方と話をしたり、グローバルな視点とコミュニケーション力を備えた国際人養成のための短期集中講座に参加し研究発表したりして、行動と視野を広げていきます。

本来、勉強とはこういうものだと思います。
自分の興味を持ったテーマを探求し深めていく。
その過程の中で、基本的な学習態度、語彙力、集中力、調査力、コミュニケーション力、プレゼンテーション能力、積極性などが養われていきます。
この研究をされた生徒の方の純粋な目と探究心と思索に、感動を覚えました。
同時に、生徒をフォローした担当の先生やご両親、そしてこのプログラムを企画した先生方に賞賛を贈りたいと思います。

現在、生徒たちの置かれた状況は、物質的にも経済的にも恵まれていて、問題意識・ハングリー精神が育ちにくい環境にあるのは事実です。
こういった自由研究をさせようとしても、生徒たちの多くはテーマさえも思いつかないし、無難で安易なテーマに逃げ込み、インターネットでちょこちょこっと調べて丸写しで終わるのが実際でしょう。
マンガ、テレビ、携帯、ゲーム、周りには楽しいことがいっぱいです。
わざわざ地道に調べていくことなど、この便利な生活に慣れた人間には本当に面倒くさいことになってしまいました。

こんな現代の生活の中で、この生徒がコツコツ地道に研究してつかんだものは大きいと思います。
今後の大学進学、就職、人生の歩み方に大いに役立つに違いありません。
ただ有名校へ進学するために勉強するのではなく、こういうことがやりたいからこんな勉強をしたいという生徒を一人でも多く育てていきたいと思います。


Miyachi-Zemi

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