辞書を調べる作業(2005年7月)

安西祐一郎著「問題解決の心理学」(中公新書757)を読んでいますが、何げない作業も新しい視点から見ると、いろいろ複雑な作業の積み重ねなのだと感心します。
そこで辞書を使って調べる作業がどうして良いのかを考えてみました。

select という単語を調べるとします。
まず、s のページを開くためにアルファベットの順序を思い浮かべます。
「どうやって調べるの?」と質問されることがありますが、その時は「ABCの歌を歌いなさい」と言います。
s が見つかると次に e、今と同様な作業を最後まで繰り返す訳です。
つまり、頭の中でアルファベットを繰り返し、s は o の前だっけ後だっけなどと考えながら進みます。
時たま音だけを考えて引いていると、l の文字を r で探してしまい、見つからないでイライラします。
m と n の勘違いも非常に多いです。

このような文字間違いをすると、次に間違わないように慎重になります。
特に今の文字、l r m n は気を付けるようになります。
時には調べた単語がまた出て来てもう一度引くはめになる時があります。
そうしたことを繰り返すうちに、もう1度引くのも嫌なので、どこかに調べたことをメモしようともするかもしれません。
つまり一つ一つの単語の重みが増してきて、注意力が増すのです。
こうして細かく見て見ると、辞書を引く作業は実に多くの下位の作業が含まれていることがわかります。

辞書を使うことで、アルファベットを繰り返し反復していること、単語の綴りにもっと注意深くなること、もう一度調べなくてもいいようにしっかり覚えておこうと意識すること、どの意味を採用するかを考えるなど、単に意味を調べるだけでなく複数の作業が伴っているのです。
だから、辞書を引くのが面倒になるのですが、実は面倒だから記憶や印象に残るというパラドックスを含んでいるように思います。
かといって、英語の苦手な生徒にすべて辞書を引かせていては、それだけで時間が過ぎてしまいますし、うんざりして興味もわきませんから、様子を見ながら適度に引かせています。
「問題解決の心理学」、夏休みに読んでみてはいかがでしょうか。

Miyachi-Zemi

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