電子辞書は紙超える(2003年9月)

電子書籍元年、携帯電話で「本」を読む人が増えている、などの記事が新聞にありました。
電子辞書の売上額がもはや紙を超えたそうです。
また、『昨年から、高校入学時に学校の先生が生徒に推薦する辞書の中に、電子辞書が含まれるようになった。
「一生、紙の辞書を持たない世代が登場する」との心配から、出版社でつくる辞書協会は辞書を薦めるパンフレットを作って高校に配っている。』ともありました。

私もパソコン上での電子辞書を使ってみました。
なるほどこれは引くまでのイライラがほとんどなく、何冊もの辞書が一つのパソコンで済んでしまいます。
そして次から次へと関連した語句を引くことができて、とても役立つものだなと感心してしまいました。
また、英語の発音まで聞くことができるのです。

市販の電子辞書の問題点は、まずキーボードが小さいこと、そして同じ言葉を国語辞典、百科事典、和英辞典、類義語辞典といったように連携して調べたい時に、いちいち入力し直さなければならないのではないかという、使い勝手が気になりました。
その点、パソコンだと連携して引けるのでかなり強力です。
これからこの機能が携帯電話、PDAなどにどのように加えられていくのか興味が尽きません。

紙の辞書を知らない世代は、紙の辞書で育った世代と一体どのような違いがでてくるでしょうか。
まず考えられるのは、五十音やアルファベットの順が、あやふやな人が今より増えるだろうということ。
単純に知的関心が高い層と低い層に分けると、高い層はそんなことがないにしても、低い層は、紙の辞書で五十音なりアルファベットを唱えながら紙をめくっていったのに、それがほとんどなくなって順序感覚が育たなくなるのではないかと思うのです。
そして学力差はますます広がり、全体的な学力低下は徐々に進むのではないかということ。

次に、紙の辞書を引くイライラが少なくなり、見付けた時の喜びが浅くなって、紙の辞書より記憶に残らないのではないか。
結局情報の価値が軽くなるのではないかということ。
イライラを体験しない分、今よりさらに面倒くさがって何もしたくない、意欲のない人間が増えるのではないか。
また、結果がすぐに出ないことにすぐ諦めてしまい、忍耐力がさらに育たない状態になるのではないかということです。

紙の辞書は今後、そろばんのような旧時代の遺物のようになってしまうのでしょうか。
早晩、辞書といったら、電子辞書が当たり前になっていくでしょうが、そうなった時、全体的な学力低下が進んでいないことを願います。
しかし、知的関心が高い家庭の子供はそんなことにはあまり影響はないでしょう。
かえって電子辞書の登場によりさらに深い学習が望めます。

結局大事なのは、学歴云々より、生きていくうえで地道に努力すること、諦めないで考え尽くすこと、そして勉強や読書がとても大切だという基本の考えを育てることだと思います。
そういった哲学みたいなものが育てば、紙であろうと電子であろうとあまり関係なくなると思うのです。
それは毎日の生活の中で子供に伝えていくものだと思います。
今、それが薄れつつあるのを感じ、危惧しています。

Miyachi-Zemi

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