夏と読書(2003年8月)

夏休みの宿題の定番は読書と感想文でした。
感想文を書かせるから読書嫌いになるのだという意見もありますが、私は感想文を書く経験をさせるべきだと思います。
もちろん、何冊もというのではなく一冊で充分だと思いますが。
学校によっては本を1冊も読ませない、感想文を一つも書かせないで、義務教育が終わることさえありうる状況なのです。

読書はなんと言っても楽しみです。
言葉からイメージを作り出したり、想像力を働かすという、こんな素晴らしい体験ができるチャンスを作ってやれないとしたら、何が教育かと言いたいと思います。
「はてしない物語」の中の主人公バスチアンのように寝食を忘れるほど読書に没頭するという経験をしてもらいたいし、そういう経験が一度でも持てた人は本当に幸せであるといえると思います。

最近の子供たちは、人の立場に立って考えるということが苦手です。
また、英文を訳していても、作者が言おうとしている事に沿った訳ができない人が多いのです。
文章題や図形などはどうやって考えたら問題が解けるかとマクロで考えることもなかなか難しい。
それらはすべて、想像力の貧困だと思います。
いろいろな原因があるでしょうが、TV・漫画・ゲームなどの映像によるイメージの固定化とともに、読書から育成されるべき想像力の未開発にも原因があるように思います。

「声に出して読みたい日本語」のブームもあり、今言葉に注目が集まっています。
将来、仕事でレポートを作るにも、プレゼンテーションをして人を説得するのにも、商品を売り込むにも、すべて言葉が重要になってきます。
そして新しい家族像を考えるとき、家族間のコミュニケーションを図る手段として、言葉はますます重要になっていくと考えられます。
言葉を自由に操れることは現代人にとって必須のことになっているし、これからますますこの傾向は高まるでしょう。

子供に読書をさせる良い方法は何かというと、それはもちろん親自身がたくさん本を読むことだと思います。
親が本を読まないのに子供に読書しなさいと言っても全く説得力はありません。
親が興味を持つものに子供も興味を抱くのは自然なことです。
夏の読書感想文というこの絶好の機会に、大人も子供たちの本をぜひ読んでもらいたいと思います。

子供のために書かれた本は、子供の視点から物事を見ています。
それは私たち大人に現実の多層性を示してくれます。
そしてまたその視点は今までの物事の見方を一変させるかもしれません。
「星の王子さま」が子供と大人では受け取り方が大きく違うように、優れた作品は様々な人にそれぞれに応じたインパクトを与えてくれるものです。
次のような作品をこの夏に体験するのはいかがでしょうか。

ミヒャエル・エンデ 「はてしない物語」、「モモ」、「ジム・ボタンの機関車大旅行」
E・L・カニグズバーグ 「クローディアの秘密」、「800番への旅」、「エリコの丘から」
フィリパ・ピアス 「トムは真夜中の庭で」
アーシュラ・ル=グウィン 「影との戦い」「こわれた腕輪」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」

Miyachi-Zemi

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