教育改革のゆくえ(2003年7月)

2003年7月1日、順天中学高校主催の「教育の理想を語る」と「教育改革のゆくえ」に関するセミナーが開かれました。
講師は、村井実氏と藤田英典氏。とても示唆に富む講演で有意義なものでした。

村井実氏(慶応大名誉教授)の「教育の理想を語る」では、国家を急遽近代化するため明治維新の学制の施行時から、「無識」・「蒙昧」・「無気」・「無力」の国民を「教化」するという思想がずっと現在まで続いている。
それは、国家主義(中央集権社会)・政事主義(成績社会・学歴社会)・官立主義(官僚社会・規制社会)・成績主義(序列社会・タテ社会)という国家第一の考えに基づいているのである。
それに対し、福沢諭吉は、人間を第一とする考えから教育をとらえ、「政事と教育を分離すべし」という教育の理想を説いている。
それは、人間主義(民主社会)・教育主義(個性社会)・私立主義(自由社会)・人材主義(実力社会)という才と能を磨くという所から発している。
そういう点からも私学に期待している、云々というものでした。
81歳というご高齢にもかかわらず、興味に対する熱心さ・情熱を失わず、円満な人柄が見て取れて理想の人間のありかたを学ばせていただいたように思います。

続いての藤田英典氏(国際基督教大教授)の「教育改革のゆくえ」では、現在の公教育の危うさについて論理的で明確な解説がなされました。
校内暴力・いじめ・不登校・青少年犯罪・学級崩壊・引きこもりなどの教育病理対策のために、80年代から「ゆとり教育」が推進されたが、一向にそれらの問題は改善・解決されていない。
国は「ゆとり教育」の失敗を認めようとせず、さらに学校五日制・授業内容・時間の大幅削減・総合学習・絶対評価など「ゆとり教育」を推し進めている。 
IT化・グローバル化・国際競争の新展開など社会変革による知識社会の到来から、文部科学省はアピール「学びのすすめ」を出すが、これは新たな進学競争と階層差の拡大をもたらし、新たなテスト主義をもたらすのではないか。

学校5日制・中高一貫校・学校選択性・習熟度別学習の拡大は、国際競争対策としてエリート育成を推し進める手段で、これはエリート主義、市場的競争、強者の論理による教育再編である。
そして、これは学力・努力・意欲・生活態度の二極分化を促進し、中・下位層の「学びからの逃走」と学力低下をもたらすとしている。
特に準備教育である初等教育段階からの選抜が行なわれ、11歳の時点で可能性が決まりつつあるという危険性がある。
そして、共生時代の学校づくりの指針として「学力・考える力・想像力」とは、学力・学習の基本である「幅広い基礎学力」と「優れた専門的能力」である。

このレクチャーで特に印象に残ったのは、初期段階での早期選抜です。
一般公立校と中高一貫週6日校では基礎学力で、もう雲泥の差になってしまいます。
専門教育を受ける大学受験のスタート段階で、一般公立校生はまともな大学を受ける資格までなくなってしまうのではないかという危惧をいだきました。
ますます学校任せではいけない時代になっているということを保護者の方や生徒に強く訴えようと思いました。

Miyachi-Zemi

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